インターネットと脳腫瘍

     天笠雅春(山形市立病院済生館脳神経外科)


 Internetの普及とともに医学分野にも応用がすすみ、日常診療、学会、学術雑誌にいたるまで、変革をもたらしている(1)。特にWorld Wide Web(WWW, いわゆるhome page)を利用した情報交換はさかんで(2,3) 脳腫瘍分野でも多数存在する。今回は脳腫瘍分野でのInternetの利用、問題点について下記の項目について検討する。

1)脳腫瘍のWWW

 Internet上の情報は役に立たないという意見がある(4)。この点も含めすでに存在する多くの脳腫瘍のhome pageについて紹介する(5)。紹介page及び下記のURL(Uniform resourse locator)へは引用5からたどれます。

2)一般への医療情報提示

 Internetに存在するひとは、専門家の前にまず患者とその家族である。学会のhome pageといえども、この一般の目について考えないわけにはいかない。自らの経験をもとにこの点について考察する。

3)画像転送と会議

 すでに電子メールを利用した個別の連絡、患者紹介は普及している。画像もFTP(file transfer protocol) を利用して送れるので便利になった。またMailing Listという機能を利用した会議室も脳外科(GIN-ML(3))にも病理(PNET(6))にも存在する。これらの役割と学会の一部機能代行などの可能性について言及する。

4)文献検索とonline Journal

 ここ数年のfree Medlineの普及はめざましく、これを利用していない人はいないと思う。学術雑誌のonline化も進み一流雑誌を本文までWeb上で読むことが可能になった 。脳腫瘍関連でBrain Pathology(7), Neurosurgery on call(8)をとりあげ紹介する 。

5)プライバシー、セキュリティー、著作権

 Internet上の症例呈示はプライバシーの侵害であるという強い意見がある。セキュリティーには十分な配慮が必要である。また著作権についても考えておく必要がある。

6)脳腫瘍の画像データベース

 脳腫瘍のデータベースは、1病院(9)、1大学、1地方、学会、全日本の各レベルにおいて存在する。日本の症例は分散化が著しく、多数の症例を収集する(学習する)ことは困難である。Internetを利用することにより、稀な症例を効率的に学習できれば極めて有用である(10)。

7)共有

 Internet上の情報は、辞書のようにすでに存在するものを検索するようなものではなく、自ら参加して作るものである。現在の学会、雑誌を中心とする整理から、誰でも利用できるWebを利用した統合整理を加えることにより新しい症例収集検討が可能になるものと思われる。

参考文献

1) 木内貴弘:学術情報とインターネット.医療とコンピュータ8:18-21,1997
2) 尾川浩一:インターネットの医学利用、III.World wide webの医学への応用.日本放射線技師会雑誌44:1465-1474,1997
3) 黒木亮他:脳外科におけるインターネットの活用:情報の交換と共有-WWWホームページからメーリングリスト、電子掲示板システムを用いた症例検討会.脳神経外科速報7 :473-478,1997
4) Eysenbach G, Diepgen TL: Towards quality management of medical information on the internet: evaluation, labelling, and filtering of information. BMJ 317:1496-1500,1998
(http://www.bmj.com/cgi/content/full/317/7171/1496)
5) http://www.patos.one.ne.jp/public/amagasa/
6) http://village.infoweb.ne.jp/~fwhh0571/pnet.htm
7) http://brainpathology.upmc.edu/
8) http://www.neurosurgey.org/
9) 天笠雅春他:パソコンとインターネットを利用した脳腫瘍画像データベースの作成. 山形済生館医誌22:41-48,1997
10) 森本耕治他:インターネットによるネットワーク型画像データベースシステム. 新医療2:58-61,1996

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