CASE 921.19
症例 19.50歳,男性
家族歴 | 兄,妹が20年近く前に,後頭下開頭術を受けており,兄はhemangioblastomaであった。 |
---|---|
50歳 5月 1日 | 嘔気,嘔吐,項部痛あり。 |
50歳 5月 9日 | 脳腫瘍の診断にて入院する。CTスキャンでは小脳虫部と右小脳半球内の脳幹部寄りに腫瘍があった。 |
50歳 5月 27日 | 多発性小脳腫瘍の診断のもとに手術を施行。 |
手術所見 | 小脳虫部の腫瘍のみ摘出した。腫瘍は易出血性,弾性硬,周囲との境界明瞭であった。 |
画像 |
CASE 921.19 SUMMARY
1.組織学的診断:capillary hemangioblastoma
スペース
2.診断に至る要点と注意点
- 0歳の男性,小脳の多発性腫瘍,家族性?
- 毛細血管網,小静脈が増生し,小脳実質内へ浸潤
- 血管の間に泡沫状ないし空胞状の細胞質を持つ間質細胞が増殖
- 好酸性の細胞質を持つグリアも小数みられる
- の異型や核分裂像はない
- 死はない
3.本腫瘍の病理学的概要
- 頭蓋内腫瘍の2.5%
- 成人の小脳,延髄背側部,頚髄上部
- 充実性あるいは大型の嚢胞を形成,嚢胞の壁に腫瘍結節
- 毛細血管が網目状に吻合しながら増生
- 血管の間に間質細胞(stromal cell),細胞質には脂質が陽性
- 免疫組織化学:間質細胞にvimentin,tubulinが陽性
- 電顕:間質細胞に脂質空胞と中間径細線維
- 間質細胞の由来が不明:内皮細胞由来説,グリア由来説,間葉系細胞由来説
4.Comment
Hemangioblastoma 血管芽腫
定義 成人の小脳に発生することが多いが,延髄背側部や頚髄上部にもみられる.
頭蓋内腫瘍の 2.5%を占める.孤発例と von Hippel-Lindau 病の部分症とし
て出現する例がある.充実性の腫瘤あるいは大型の嚢胞を形成し,嚢胞随伴例
ではその壁に腫瘍結節(mural nodule)が認められる.血管に富む腫瘍であり,
毛細血管の構造を示す血管が網目状に吻合しながら増生しており,その間に間
質細胞(stromal cell)が認められる.間質細胞は小型の核と広い泡沫状ない
しレース状の細胞質からなり,細胞質には脂質が含まれている.核にはかなり
の多形性を示す例もある. 免疫組織化学的に vimentin と tubulin が間質細
胞に証明される.電顕的には間質細胞には脂質空胞と中間径細線維が観察され
る.間質細胞の由来に関しては,内皮細胞由来説,グリア由来説,血管を形成
する間葉系細胞由来説があり,確たる定説はない.