CASE 921.2
症例 2.20歳,女性
19歳 8月26日 | 全身痙攣発作が出現 |
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9月 4日 | CTスキャンにて左側頭後頭葉に周囲にlow density areaを伴うrim enhanceされるhigh density areaが認められた。 |
10月14日 | 腫瘍全摘出術施行。 術後局所に60Gyの照射および化学療法を受ける。 |
20歳 10月13日 | 腫瘍再発の診断の基に摘出術を受ける。 |
手術所見 | 腫瘍は左側頭葉底部にあり,赤褐色弾性硬でうずら卵大。 一部に膠様で軟らかい部分と凝血を混じていた。 |
画像 |
CASE 921.2 SUMMARY
1.組織学的診断:anaplastic astrocytoma
スペース
2.診断に至る要点と注意点
- 成人女性の側頭葉腫瘍,全摘後1年で再発(比較的速い経過)
- 細胞密度が高い
- 様々な形態の腫瘍細胞(紡錘形,類円形,巨細胞など)
- 細胞質の好酸性が強い細胞がみられる
- 核の大小不同,核分裂像
- 間質は血管に富む,内皮細胞の増殖は目立たない
- 壊死巣の形成はない
3.本腫瘍の病理学的概要
- 星膠腫に退形成性変化が加わった腫瘍型
- 細胞密度の増加,細胞の異型性多態性の出現,核分裂像の増加,間質血管内皮細胞の増殖などがみられる
- この群に含まれる腫瘍には:
通常の星膠腫の一部に退形成性変化を認めるもの
大型類円形細胞の増殖を主体とするもの
(様々な変性構造物を含むもの)などの組織亜型がある.
- 鑑別診断:良性星膠腫か多形膠芽腫か
Mayo Clinicのグループによるgrading4つの組織学的基準:核異型,核分裂像,内皮細胞増殖,死の有無
基準を満たさない腫瘍 ———— grade 1
基準を1つ満たす腫瘍 ———— grade 2
基準を2つ満たす腫瘍 ———— grade 3
基準を3つ以上満たす腫瘍 ——– grade 4
4.Comment
Anaplastic astrocytoma 退形成性星細胞腫
定義 星細胞腫の組織学的特徴を示す腫瘍であるが、細胞密度の増加、細胞の多形性と核異型の出現、核分裂像の増加、間質血管内皮細胞の増殖など退形成性変化が加わった腫瘍型である。
特徴 成人の大脳半球と小児の脳幹に発生し、境界の不鮮明な浸潤性の発育を示す。星細胞の特徴を持った腫瘍細胞から成るが、分化型の星細胞腫に比べて、明らかに細胞密度、核の多形性、クロマチン量、核細胞質比などが増加しており、核分裂像も散見される。しかし、核の柵状配列を伴う壊死巣は通常認められない。間質には毛細血管の増生と内皮細胞の増殖がみられるが、膠芽腫にみられる糸球体係蹄様構造の形成は乏しい。
5.文献
- 石田陽一:Astrocytomaの諸問題.脳腫瘍病理 4:48-60, 1987
- Daumas-Duport C, Scheithauer B, O’Fallon J, et al.: Grading of astrocytomas: A simple and reproducible method.Cancer 62:2152-2165, 1988