CASE 921.3
症例 3.56歳,男性
54歳 1月 4日 | 嘔吐にて発症,CTスキャンにて右前頭葉の腫瘤が認められた。 |
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1月 18日 |
腫瘍亜全摘術施行。術後化学療法,インターフェロン投与と68Gyの 照射が行われた。 |
10月 11日 | 全身痙攣 |
55歳 3月 | CT上で腫瘍再発と両側大脳への浸潤がみられた。 |
6月 | 意識レベル低下,経口摂取不能となる。 |
その後 | 膀胱炎,肺炎を併発,脳幹反応消失となり,56歳 2月 7日 死亡。 標本は剖検時に右前頭葉より作成したもの。 |
画像 |
CASE 921.3 SUMMARY
1.組織学的診断:glioblastoma multiforme
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2.診断に至る要点と注意点
- 成人男性の前頭葉腫瘍,全経過2年で死亡
- 細胞密度が高い,広範囲に浸潤
- nuclear palisading を伴う壊死巣が多数形成されている
- 様々な形態の腫瘍細胞,小型の細胞が多い
- 一部の細胞は星状膠細胞に類似している
- 核の大小不同,核分裂像がみられる
- 間質は血管が豊富で,血管内皮細胞の増殖がみられる
3.本腫瘍の病理学的概要
- 悪性の神経外胚葉性腫瘍
- 肉眼的にも組織学的にも多彩な形態を示す
(多形膠芽腫,glioblastoma multiforme)
- 星膠腫との形態学的類似点が多い(astrocytoma grade 4)
- 頭蓋内腫瘍の10%を占め,成人に多い
- 好発部位は大脳半球
前頭葉(34%),側頭葉(25%),頭頂葉(20%),後頭葉(5%)
基底核・視床領域(5%) - 大脳白質に多彩な色調を持った軟らかい腫瘤を形成
壊死,出血がしばしば,嚢胞(+/-) - 浸潤性増殖が顕著,脳梁を介して反対側の白質へ浸潤すると
「蝶形」の割面像がみられる.クモ膜下腔や脳室腔に播種性増殖 - 細胞密度が高く,多種多様の形態を示す細胞から成る
- 核の大小不同,多核,巨核,核クロマチン増量,核分裂像が多数
- 大小の壊死巣,壊死巣周囲の核の柵状配列
- 血管内皮細胞の増殖,腎の糸球体係蹄様構造(glomerular structure)
- 免疫組織化学: GFAP, vimentin, S-100蛋白
Ki-67標識率は平均で18%,BrdU標識率は10% - 電顕:細胞質にグリア細線維
4.Comment
Glioblastoma 膠芽腫
定義 退形成変化の高度な膠腫で、細胞密度が高く、構成細胞に多形性がみられるが、少なくとも一部に星細胞腫の特徴が残されているものである。
特徴 最も頻度の高い悪性膠腫であり、肉眼的にも組織学的にも多彩な形態像を示すので、glioblastoma multiforme 多形膠芽腫とも呼ばれる。成人の大脳半球、特に前頭葉と側頭葉に好発する。浸潤性増殖が顕著で、脳梁を介して反対側の白質へ浸潤し、蝶々の形をした割面像や、クモ膜下腔や脳室腔に播種をきたすこともある。
腫瘍構成細胞は類円形、短紡錘形、星芒状、多核巨細胞など多種多様の形態を示し、細胞密度が高い。核の大小不同や核分裂像、多核や巨核の出現もしばしばである。腫瘍内には小さな壊死巣が存在し、その周囲に核が柵状に配列する所見(nuclear pseudopalisading around foci ofnecrosis)は膠芽腫に特有な組織像である。
血管増生と、内皮細胞の増殖(endothelial proliferation)が目立ち、腎の糸球体係蹄に類似の構造を示すこともある。