スライドセミナー「脳腫瘍」

CASE 921.4

症例 4.46歳,男性

既往歴:生来知能低下有,十数年前より数秒間続く意識消失発作。

   
              

45歳 7月中旬  尿失禁,歩行障害,嘔吐出現。
左前頭葉腫瘍の診断で,腫瘍部分摘出術を施行。
術後,化学療法と放射線照射60Gyを受ける。
8月     左前頭葉腫瘍の診断で,腫瘍部分摘出術を施行。
術後,化学療法と放射線照射60Gyを受ける。
12月 18日 痙攣発作。発熱。CT上腫瘍再発あり。
46歳 2月  1日 腫瘍部分摘出術施行。術後,意識低下と右片麻痺が見られた。
4月     化学療法剤,TNFの局所投与。CT上腫瘍の拡大があり,
意識レベル低下,寝たきりとなる。
その後 8月,10月に肺炎を併発。12月26日永眠。
標本は剖検時に左前頭葉より作製したもの。
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CASE 921.4 SUMMARY

1.組織学的診断:giant cell glioblastoma

スペース

2.診断に至る要点と注意点

  1. 成人男性の前頭葉腫瘍,全経過1年5ヶ月で死亡
  2. 比較的限局性の増殖,周囲に水腫と反応性グリオーシス
  3. 凝固壊死,出血がみられる
  4. 奇怪な形態を示す巨細胞が目立つ
  5. 紡錘形細胞や小円形細胞も混在している

  6. 間質に著しい線維化がある,xanthoma cellの出現もみられる

3.本腫瘍の病理学的概要

  1. 成人の大脳に多い
  2. 腫瘤は境界が比較的明瞭,割面は灰白色顆粒状で,かなり硬い
  3. 多核・巨核の奇怪な形態を示す異常に大きな細胞からなる
  4. 大きさぱ数百ミクロンに達する

  5. d. 細胞間に好銀線維が良く発達,血管周囲にリンパ球浸潤
  6. 免疫組織化:Vimentin陽性,GFAP染色は陰性または陽性
  7. 組織由来は?

    神経外胚葉腫瘍説 giant cell glioblastoma
    間葉系腫瘍説  monstrocellular sarcoma

4.Comment

Giant cell glioblastoma 巨細胞膠芽腫

 定義 膠芽腫の一種で、多核・巨核の奇怪な形態を示す巨細胞が主要な構成細胞として、組織全体に優位に増殖している腫瘍型である。

 特徴 境界の比較的明瞭な硬い腫瘤を作り、割面は灰白色で肉様を呈する。巨細胞の形は不定で、大きさは数百ミクロンに達する。
巨細胞は vimentin 染色が陽性であり、GFAP は陰性の例と陽性の例がある。 間質に豊富な好銀線維の形成と、血管周囲のリンパ球浸潤がしばしば認められる。

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