CASE 921.7
症例 7.14歳,女性
14歳 10月 |
頭蓋内圧亢進症状ありCTスキャンで両側脳室体部から前角にかけて, 多数の石灰沈着を伴う脳室内腫瘍が認められた。 |
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12月 24日 | 腫瘍部分摘出術を施行。 |
手術所見 | 黄白色軟,一部易出血性の腫瘍で,右尾状核に付着している。 7~8割を摘出。 |
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CASE 921.7 SUMMARY
1.組織学的診断:subependymal giant cell astrocytoma
スペース
2.診断に至る要点と注意点
- 若年女性の側脳室腫瘍,石灰沈着を伴う
摘出術後6年で再発はない. - 脳室壁に付着した,易出血性の腫瘍
- 好酸性硝子様の広い細胞質を持つ大型細胞とその間にみられる
小型紡錘形細胞,細胞間に線維性基質が豊富 - 核は大きく,核小体明瞭(神経細胞の核に似ているものもある)
- 核分裂像はほとんど見られない
- 間質は血管が豊富,内皮の増殖はない
- 結節性硬化症の家族歴,既往歴に注意する
3.本腫瘍の病理学的概要
- 結節性硬化症にしばしば合併する側脳室壁の腫瘍
- 大型細胞:gemistocytic astrocyte様あるいは神経細胞様
小型の紡錘形細胞:fibrillary astrocyte様 - 間質:血管がよく発達,石灰沈着がしばしば
- 免疫組織化学:大型細胞の一部はGFAP,一部はNFP に陽性
- 電顕:中間径filament,微小管,dense core vesicles
4.Comment
Subependymal giant cell astrocytoma 上衣下巨細胞性星細胞腫
定義 側脳室壁から発生し、主に脳室内に向かって発育する境界明瞭な腫瘍で、星細胞に類似の大型細胞が主な構成要素である。
特徴 結節性硬化症の1部分症として若年者の側脳室壁に好発する腫瘍である。限局性の脳室内腫瘤の形で増殖し、モンロー孔を閉塞して水頭症を併発することがある。
腫瘍の割面は実質性でざらざらした質感を持っている。組織学的には gemistocytic astrocyte 様あるいは神経細胞様の大型細胞と、小型の紡錘形細胞が増殖している。大型細胞の核はときに偏在し、核質が明るく、明瞭な核小体を含んでいる。
細胞質は均一に好酸性硝子様である。間質には血管がよく発達し、 石灰沈着がしばしばみられる。 少なくとも一部の大型細胞はGFAP 陽性である。 結節性硬化症の脳室壁には小さな結節病巣(subependymal nodules)が多発し、 脳室壁に蝋を垂らしたような外観(candle gutterings)を与えることがある。
この結節は組織学的には上衣下巨細胞性星細胞腫とほぼ同様であり、石灰沈着がより顕著である。