CASE 921.11
症例 11.5か月,男性
0歳 7月 | 不明熱の検査中,エコーにて偶然左側脳室三角部腫瘍が発見された。 |
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0歳 8月29日 | 腫瘍摘出術施行。 |
手術所見 | 線維性の被膜に覆われた境界明瞭な腫瘤で,周辺部は非出血性,内部は白色ないし灰白色で軟らかく,上方に進展した部位は乳頭状であった。 |
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CASE 921.11 SUMMARY
1.組織学的診断:Choroid plexus papilloma
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2.診断に至る要点と注意点
- 5ヶ月の男児,偶然発見された側脳室腫瘍
- 被膜で覆われた境界明瞭な腫瘍,一部は乳頭状
- choroid plexusに類似の乳頭状構造が特徴的
(標本の一部に正常のchoroid plexusが含まれている) - 腫瘍細胞は類円形核を持つ立方~円柱上皮,基底膜が明瞭度
- 核の異型は乏しく,分裂像は少ない
- 血管内皮細胞の増殖や壊死巣は見られない
3.本腫瘍の病理学的概要
- 膠腫の1.6%
- 小児の側脳室と成人の第4脳室に好発
- 立方上皮の形態を示す腫瘍細胞が,間質に添って乳頭状に配列
脈絡叢の構造を忠実に模倣している - 免疫組織化学:S-100蛋白,cytokeratin, EMA, GFAP, prealbumin
- 電顕:微絨毛,線毛,接着構造(tight junctionなど),細胞底面の基底膜
- 悪性型(choroid plexus carcinoma)は小児で稀に見られる
(成人の症例は乳頭状腺癌の転移との鑑別が問題)
4.Comment
Choroid plexus papilloma 脈絡叢乳頭腫
定義 脈絡叢由来の腫瘍であり、正常の脈絡叢に類似の形態を示す上皮性腫瘍である。
小児の側脳室、成人の第4脳室に好発する腫瘍で、脈絡叢の構造を忠実に模倣した形態を示す。腫瘍細胞は単層立方上皮または偽多層円柱上皮の形態を示し、血管に富む狭い間質に添って乳頭状に配列する。
細胞底面には基底膜がみられる。少数の核分裂像や核の多形性を認めることがある。免疫組織化学的には S-100 蛋白 , cytokeratin, transthyretin が陽性である。 また、一部の腫瘍細胞が GFAP 陽性となることもある。