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CRINETは新規の腫瘍型か

 AT/RTはINI-1蛋白の陰性化を特徴とする、きわめて予後不良の胎児性脳腫瘍であるが、最近注目されている cribriform neuroepithelial tumor (CRINET) はINI-1陰性であるが予後が比較的良好な脳腫瘍である。

 Hasselblatt M, et al: Cribriform neuroepithelial tumor (CRINET): a nonrhabdoid ventricular tumor with INI1 loss and relatively favorable prognosis.J Neuropathol Exp Neurol. 2009 Dec;68(12):1249-55. [PMID:19915490]

 著者は2例の特異な形態の小児脳腫瘍を報告した。小児に発生する脳室内腫瘍であり、腫瘍細胞が特有な柵状、索状、篩状の上皮様配列を示す。免疫組織化学的にはEMAが細胞表面に陽性で、INI-1染色が陰性である。ラブドイド細胞は認められない。SMARCB1遺伝子のエクソン4にhomozygous 4-bp duplicationが1例で確認された。術後、再発なく5年以上生存しており、予後は良好である。

JBTRCコメント

 INI-1染色陰性の胎児性脳腫瘍は一般的にAT/RTと診断され、極めて予後不良とみなされる。ところが本腫瘍ではINI-1陰性でありながら、組織像はAT/RTとは異なり、しかも予後が比較的良好であるので、正しい病理診断が患者の治療を進める上で極めて重要である。最近の報告では、これまでに4例の報告があり、術後早期の死亡例もある(Park et al.: 12 JAN 2012, DOI: 10.1111/j.1440-1789.2011.01293.x [PMID: 22239490])。さらなる症例の積み重ねが期待される。(文責:中里 洋一)

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